ビルトンはどうして南アフリカで生まれたのか?
ビルトンを食べたことがある方でも、
「そもそも、なんでこんな食べ物が生まれたんだろう?」
と思ったことがあるかもしれません。
今では、高たんぱくなおやつだったり、お酒のお供だったり、気軽に楽しめる食べ物として知られています。
でも、もともとのビルトンは、もっと生活に根ざした、とても実用的な食べ物でした。
冷蔵庫がなかった時代に、肉をどうやって長く保存するか。
そんな工夫の中から生まれたのが、ビルトンです。
肉をできるだけ長く持たせたい
今なら、肉を買えば冷蔵庫や冷凍庫に入れれば済みます。
でも、昔はそうはいきません。
特に南アフリカのように広い土地を移動する暮らしの中では、食料を長く持たせることがとても大切でした。
そこで、肉に塩をして、酢やスパイスを使い、じっくり乾燥させる。
水分を減らすことで保存しやすくなり、持ち運びもしやすくなる。
今考えるととてもシンプルですが、当時の人たちにとっては、かなり大事な生活の知恵だったはずです。
長い移動の途中にも肉を食べる
19世紀の南部アフリカでは、牛車などで長い距離を移動する人たちがいました。
今のように、途中でコンビニに寄ったり、冷たい飲み物を買ったりできるわけではありません。
そんな旅の途中で、保存がきいて、持ち運べて、しっかり栄養も摂れる肉は、とても頼れる食料だったと思います。
ビルトンは、最初から「おしゃれなスナック」として生まれたわけではありません。
必要だったから作られ、便利だったから残り、そして美味しかったから食文化として続いていった。
私は、この背景がビルトンの面白いところだと思っています。
酢とスパイスの香り
ビルトンには、塩だけでなく、酢やスパイスを使います。
特によく使われるのが、コリアンダーやブラックペッパーです。
実際にビルトンを作っていると、このスパイスの香りがかなり印象的です。
肉を漬け込んでいるときも、乾燥していく途中も、コリアンダーの香りがふわっと立ってきます。
そして乾燥が進むにつれて、肉の香りとスパイスが少しずつ馴染んでいきます。
派手な味ではありません。
でも、噛んでいると牛肉の旨味がじわっと出てきて、そこにスパイスの香りが重なります。
このシンプルさが、ビルトンらしさなんだと思います。
保存食だったものがいつもの食べ物に
冷蔵庫が当たり前になった今、保存のためだけにビルトンを作る必要はありません。
それでも南アフリカでは、今もビルトンが日常的に食べられています。
おやつに食べたり、お酒と一緒に楽しんだり、スポーツを見ながらつまんだり。
専門店で大きな塊からスライスしてもらうこともあります。
昔の保存食が、そのまま消えるのではなく、日常の食文化として残っている。
そこも、ビルトンの魅力のひとつです。
日本でビルトンを作るということ
KAROO Biltongでは、この南アフリカの食文化を、日本でも気軽に楽しんでもらえたらと思いながらビルトンを作っています。
もちろん、日本で作る以上、日本の環境や食品としての安全性に合わせて考えなければならないこともあります。
でも、できるだけ大切にしたいのは、ビルトンらしいシンプルさです。
牛肉の味。
酢のほのかな酸味。
コリアンダーやブラックペッパーの香り。
そして、時間をかけて乾燥させることで生まれる食感。
なるべく余計なものを足さず、肉そのものを楽しめるビルトンにしたいと思っています。
背景を知ると少し味が変わる
食べ物って、背景を知ると少し面白くなります。
どうして生まれたのか。
どこで食べられてきたのか。
どんな人たちが、どんな場面で食べてきたのか。
ビルトンも、ただの乾燥肉ではなく、南アフリカの暮らしの中から生まれて、長い時間をかけて受け継がれてきた食べ物です。
そんなことを少し思い浮かべながら食べてもらえたら、作り手としては嬉しいです。
まだ日本ではあまり馴染みのないビルトンですが、少しずつ知ってもらえたらと思っています。